船体クリーニングロボットHullBUG

特殊開発されたロボットクローラーが船体の水中部分に付着した生物膜を取り除きます。バッテリ駆動のこの自走式クローラーにとって、正しい駆動装置を選ぶことは開発の重要な一歩でした。

大型船の多くは年月とともにフジツボなどの水棲生物が船体下部に付着し、この付着物のために船の速度は低下します。この堆積プロセスを妨げるため、船体下部に毒性のある塗料を塗装する方法がよく用いられますが、この方法は環境にやさしいとは言えません。塗料が水中の生物体系に含まれる銅やその他の重金属をたえず分離し、水中に生息する生物に悪影響を与えるからです。さらに、5年~10年おきに古くなった塗料を落として再塗装する必要があり、そのつど、何トンもの有毒なごみが排出されることも深刻な問題です。除去装置を搭載したHullBUGは、効率的かつ環境にやさしく、付着した生物膜を取り除きます。

水中部分の船体が清潔だと、船はより効率的に航行し、燃料コストで5パーセント以上も節約することができます。大型船では効率的な洗浄で最大時速10 kmまでスピードがアップします。生物膜の問題がなくなれば、水面下の塗装は最適化され、腐食防止に焦点を絞ることができます。もしこの方法が現在世界中で操業しているすべての船舶に適用されたとしたら、それによってもたらされるエネルギー節減が、温室効果削減に著しく貢献することになります。有毒な塗料の使用を長期に渡って避けるためにも、船体下部の生物膜を効率的に取り除く方法が模索されました。それがHullBUG (Hull Bioinspired Underwater Grooming) の開発コンセプトです。

「HullBUGの最も重要な特徴は、その小さなサイズです」とSeaRoboticsの研究エンジニア、ケネス・ホラッパ博士は説明します。「ロボットの全長はわずか50センチほどですが、船体下部のカーブした表面上でクローラーが船体に密着したまま動きまわるには、このサイズは構造上必要不可欠でした。HullBUGが港周辺で行方不明になったり、操行中に壊れるなどの装置特有の水中や港でのリスクもあるため、装置のサイズとコストを抑えることは重要なポイントでした。そのためプロジェクト当初から、軽量と低コストは、HullBUGプロジェクトを実現化するための決定的な要素でした。大きさと重量に関するこの特殊要求は、HullBUG用の技術的コンポーネントの選択にも表われています。

運動制御のコンポーネント
HullBUGのモータ選択は、非常に重要で、設計上、様々な制限と妥協を余儀なくされました。SeaRoboticsは、車輪付とキャタピラ付の2種類の基本モデルを製造することにしました。モータのサイズを決定するには、完成した装置の出力値、回転数、トルク特性の推定値が必要でした。

決定的な決め手は、クリーニングの際、船体の表面を除去装置が押しながら作業することにより生じる抵抗値、クローラーが水中を移動する際の流体の抵抗、モータを海水から保護する軸シールの摩擦による損失、車輪もしくはキャタピラ(モデルによって異なる)の摩擦でした。

「コンポーネントについて綿密な調査をした結果、私たちはマクソンのモータとギアヘッドを使うことに決めました。マクソンのモータはコスト効率が非常に高く取り付けも大変容易だからです。」とホラッパ氏は語ります。SeaRoboticsはプラネタリギアヘッドつきのECフラットモータを採用しました。HullBUGのキャタピラ付モデルでは2個の駆動装置 (EC 45 flat + GP 42 C)、タイヤ付モデルでは4個の駆動装置が使用されます。

除去装置の部分にはEC 45 flatモータがもう1つ内蔵され、簡単なスパーギアヘッドと組み合わされています。HullBUGを船体の下の部分に固定させる負圧システムの駆動装置には、強力なフラットモータEC 90 flatが使われています。

マクソンのコアレスロータ内蔵のDCモータおよびブラシレスモータには、サイズは6 mmから90 mmまで、出力は30 mWから500 Wまでと、幅広いラインアップが揃っています。「製品の種類の豊富さと高品質のサービスで、私たちは正しいパートナーを選んだのだという安心感を得ました。」とホラッパ氏は付け加えています。maxon motor製のモータは、軽量サイズかつ長寿命が自慢です。ブラシレスECモータの全製品は電子整流のため、ブラシ磨耗が起きず極めて長い寿命を保ちます。選ばれたモータは、サイズと重量が主な選択基準となるロボット工学用に設計されたものです。HullBUG用に選ばれたフラットモータEC 45 flatは非常に効率的で、重さは75 gしかありません。6個のECフラットモータはすべて出力が30 W以上です。この用途に最も重要な仕様はトルクでした。HullBUGが粗悪な環境条件で使用された場合でも、EC 45 flatは最高56 mNmまで(選択する巻線によって異なる)の最大連続トルクを提供します。ホラッパ氏は次のように説明しています。「GP 42 Cギアヘッドの耐久性が高いため、車輪をギアヘッドの軸に直接取り付けることが可能になりました。そのおかげでシステム構造全体を大幅に簡略化することができたのです。」

マクソン製のギアヘッドにはさまざまな減速比が揃っているため、用途に応じて回転数を減らしたり、トルクを何倍にもすることができます。HullBUGは完全に自律的に機能しなければならないという前提条件のため、バッテリ駆動で何時間も作動できるように設計しなければなりませんでした。コードがあったとすれば除去作業の際にずいぶん邪魔になったことでしょう。バッテリ寿命を最大にするには、生物膜の除去はできるかぎり効率的に行う必要があります。

インテリジェントなナビゲーション
電気芝刈り機などで用いられるランダムなナビゲーションシステムの場合、作業はいつかは完了するものの、迅速とは言えません。そのうえ水中の船体面積は非常に大きく、3,000平方メートルを超えることもしばしばあります。船体を清潔に保つためには、複数台のHullBUGを同時に投入しなければなりません。それには綿密なプランと連携に基づく正確なナビゲーションシステムが不可欠です。そこで、複数のHullBUGsが同時に効率的に船を掃除できるよう、さまざまなナビゲーションモードが開発されました。水中の船体表面は複数の領域に分割され、船を段階的に掃除するための数多くのアルゴリズムが統合されました。また、平らな船底を効率よく掃除するためのアルゴリズムとそれに対応するセンサも追加されました。さらに、HullBUGはMARS(小型音響ソナー)で制御することもできます。

この目的のために、集束したビームを発信する短距離ソナーが特別に開発され、前方の壁や段差を「見る」ことができるようになりました。別のナビゲーション方法に、ナビゲーション情報用のマイクロ電気工学的センサシステム (MEMS) があります。また別のフィードバックモードではエンコーダに基づいた走行距離測定法を用いています。この機能は、移動するシステムの位置を決定するために、その推進システムのデータを手がかりにして行なうもので、モータのセンサからの応答が経路の正確な予測のために利用されます。サイズの小ささとコスト上の理由から、光学的エンコーダを追加する代わりにモータのホールセンサが使われました。ホールセンサおよび選択されたモータとギアヘッドの組み合わせの精度は1ミリ以下にとどまります。

さらに続くソフトウェア開発
自律式クローラー用に運動制御に適したシステムを選択・実装したところで、依然としてソフトウェアが開発コストのかなり大きな部分を占めています。開発チームにとっての最大の課題の1つとなったのが、特殊な環境条件下でも正確な位置取りが可能で、故障がなく高性能のナビゲーションシステムを作ることでした。胴体部分洗浄の際に起こりうる様々なシチュエーションに対応するため、様々なプログラムが必要となりました。この複雑なシステムの中でも特に困難を極めたのは、ナビゲーション操作の拡張を可能にする制御論理を正しく構成することでした。

「これまで何年にもわたって難解な作業にとりくんできましたが、今後さらにソフトウェア開発にはいっそうの努力が必要となることでしょう。クローラー部分は完全に実用可能ですが、船を用いた包括的なテストはこれからも必要です。」とホラッパ氏は語ります。すでに現段階で、非常に困難な条件下や地図作成されていない地表でも、ロボットは仕事をこなせなくてはいけません。また、装置を回収できるよう水面まで戻って来られるようでなければなりません。これはきわめて困難な課題のように聞こえますが、ホラッパ氏は楽観的です。「最近実習訓練を受けた技術者がいますが、彼は短期間で装置を使いこなせるようになりました。ユーザインターフェースにはSeaRoboticsの無人操縦船舶製品 (USV) シリーズが使用されます。すでに多くの様々なクライアントが数百時間にわたって使用し、その使いやすさが実証された、直観的なグラフィカルユーザーインターフェースを用いています。」ロボットは稼働可能で、ナビゲーションソフトも機能します。次なる目標は、HullBUGシステムのユーザビリティを向上し、特別な技術的訓練を積まなくても従業員が使うことのできるようにインターフェースを構造化することです。
 

 © maxon motor ag

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