極限条件に耐えるマクソンの真空対応型モータ

マクソンモータはInstrument Design Technology (IDT)と連携し、英国にある粒子加速器(シンクロトン)内でのモータの使用を可能にするため、極限条件下の真空に対応した小型ブラシレスモータの改良を数ヶ月で行いました

オックスフォードシャー州にある粒子加速器施設ダイヤモンド・ライト・ソース(DLS)では多様な研究プロジェクトが行われています。例えば、飛行機の翼面荷重の作用やHIVウイルスの習性についての研究、巻物を損傷させずに羊皮紙の古文書の調査が行われました。45,000平方メートルの面積を持つこのシンクロトン内では、分子構造を測定するために電子が最大3ギガ電子ボルト(GeV)まで加速され、太陽の100億倍まで明るい光が放射されます。電子が空気分子と衝突して失われないように、全工程は大気圧の10億分の1の圧力しかない真空内で行われます。イギリス北西のウィドネスにあるInstrument Design Technology (IDT) 社は、シンクロトロン装置を供給する世界の主要企業のひとつで、世界有数の技術力を誇ります。

ダイヤモンドに定められた基準を満たすには、X線分光器の新しいビームラインB18に使用されている2結晶モノクロメータ(DCM)がブラッグ回転軸を駆動する際に、通常のステッピングモータではなくマクソンDCモータが必要となりました。IDTの代表取締役ポール・マレー氏はこれについて次のように説明しています。「これまで使用されてきたステッピングモータよりも、回転数が高いこと、モータ温度が低いこと、動作音が大幅に少ないことが、新しいモータに求められました。ステッピングモータは一般的に動作音が大きく、振動源となることも少なくありません。これらの問題を解決できれば、DCMの効果もすぐに向上するはずでした。しかしその一方で、モータは10-8トールの真空でも正常に機能する必要がありました。」これらの課題を解決するため、maxon motor UKのセールスエンジニア、ポール・ウィリアムズがIDTのカスタマイズを担当することになりました。

耐熱高性能ブラシレスモータの開発
特別なソリューションをカスタマイズするということは、イギリスとスイス両国のマクソンチームにとって非常にやりがいのあるプロジェクトでした。それは、マクソンが長年にわたって、宇宙分野や外科手術ロボットなど、困難な用途向けの高性能モータのカスタマイズで数多くの成功を成し遂げているためです。このプロジェクトでは経験豊富なマクソンのエンジニアが全段階を通して開発をサポートしました。ウィリアムズは当時を回想して語ります。「シンクロトロン内部の高真空状態を維持する必要があったため、モータの個々の部品および構造におけるガス放出の可能性について分析しました。接着剤や樹脂を使わない、極めて耐熱性が高いブラシレス高性能モータを開発することが我々の課題でした。」

この特別なソリューションの出発点となったのが、マクソンのEC 22 HD (Heavy Duty)です。このブラシレスφ22 mmモータは、本来、海抜以下で行う石油採掘用に開発されました。レーザー溶接されたステンレス製ハウジングと広範な温度範囲を持つこのモータは、真空で使用する際の要件の多くに当初から対応していました。ブラシレスDCモータの性質上、このモータは高効率および低騒音という特徴を持っているほか、それまで使用されていたステッピングモータよりも応答挙動が優れています。

EC 22 HDをシンクロトロンで使用するためにカスタマイズした際、マクソンは数多くの要件を考慮しなければなりませんでした。その最初の要件が温度特性です。真空内ではモータから生じる熱を大気圧中のように対流によって放出することができないため、オーバーヒートしやすくなります。そのため、耐熱性の高いモータを選定することが重要になります。そして、熱伝導によってできる限り熱が放出されるように他の部品を配置する必要があります。また、高い減速比を持つギアヘッドも大切な要素のひとつです。10-7トール以上の高真空では、樹脂や接着剤といった材料からガスが放出されます。ガス放出は性能の低下につながり、高真空状態を作る妨げにもなります。そのため、モータの構成部品はひとつひとつ点検され、必要に応じて改良が加えられました。通常使用している接着剤はガス放出のおそれがあるため使うことはできず、モータの大部分はマイクロレーザー溶接によって組み立てられました。

マクソンのエンジニアは、以前携わったことがある航空宇宙分野のプロジェクトの経験から、モータベアリングに通常使用されるグリースが低圧条件でどう反応するかについての知識を持っていました。そのため、高真空条件下でも蒸発しない不活性の潤滑剤を使用し、さらにそれに伴う動作特性の変化とモータの動作時間の変更も考慮しました。それでもまだ残っているガス放出源を取り除くため、モータは管理された真空状態の中、120°Cの温度に24時間置かれてテストされました。その結果、200°Cの温度に対応するように設計されたEC 22 HDは、出発点として理想的な製品であることが証明されました。

雪片内の塵
特別設計のマクソンECモータが装備された2結晶モノクロメータは、ダイヤモンド・ライト・ソースのビームラインB18で使用されており、意義深い実験に日々役立っています。イタリアの研究者グループはこのビームラインB18を利用して、およそ80万年前に降った雪片の中にあった塵について調査を行いました。これは、最初の人類が地球上に現れたと言われる時期に相当します。南極の氷床コアは、何十万年も昔の凍結した雪の層が堆積したもので、雪が降り積もったときに雪の中に閉じ込められた微小な塵粒には、その時代の地球の気候、大気、火山活動などのさまざまな情報が含まれています。研究者たちはX線吸収分光器を使って塵の鉱物組成を測定し、それがどの時代のものかを特定して、数十万年に渡る地球の気候パターンの変化について推論を立てることができました。

 © maxon motor ag

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